M&Aに関わるなら知っておきたい!「デューデリジェンス」とは何?

M&Aに関わるなら知っておきたい!「デューデリジェンス」とは何?

社会人であれば、「デューデリジェンス」という言葉をどこかで一度ぐらいは聞いたことがあるかもしれません。しかし、実はよく知らないという人も多いのではないでしょうか。経営企画部など、M&Aに関わる部署に配属される可能性がある場合は特に、デューデリジェンスの正確な意味を知っておきましょう。

■デューデリジェンスの意味は「注意義務」

M&Aの場面でのデューデリジェンス

デューデリジェンス(due diligence)は、日本語に訳せば「適正な努力」という意味です。

デューデリジェンスが適用されるのは一般的に「契約締結」の局面です。契約を結ぼうとするときには、お互いに相手方がいます。お互いにとってメリットがある内容で、相手方が誠実に交渉に入っていると信頼できるから、契約を締結して取引に入るのです。

 

契約の相手方に、もし契約締結後にこちら側が大損害を被りそうな事情が生じているならば、契約を締結すべきではありません。まして、相手方がその事情を隠し、あるいはその事情を知らずに交渉に入っているならば、交渉を中止しなければなりません。

 

つまり、契約後の損害に繋がりそうな様々な事情を先回りして知っておくために、相手方の現状について事前に徹底的なリサーチを図ることが必要なのです。そのような一連のリサーチ作業をまとめて、デューデリジェンスと呼びます。

 

そして、契約を結ぶ場面における「適正な努力」とは、相手方の会社に隠れた不都合な事情に気づいて回避する「注意義務」と言い換えることができます。

 

特に、M&Aの契約をめぐっては巨大な金額が動きます。従業員や債権者など、利害関係人も多く状況が複雑な場合があります。だからこそ、契約書に記名押印をする前に、M&Aの相手方の素性などを慎重にくまなくチェックする必要があるのです。M&A契約の最終局面の正念場です。

なお、「買い手が売り手を探る」のが、M&Aにおけるデューデリジェンスの意義となります。

3側面でのデューデリジェンス

デューデリジェンスを実施するにあたっては、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)を締結しておかなければなりません。

 

デューデリジェンスによって自社の情報を洗いざらい探られる「売り手」側企業の立場では、その情報をM&A以外の目的に流用されては不測の損害を被るからです。よって、安心して円滑にデューデリジェンスが行われるよう、M&A契約書を作成する前に、秘密保持契約を締結しておかなければなりません。

 

M&Aの相手方に対して実施するデューデリジェンスは、おもに「事業的」「経済的」「法的」といった3つの側面から行うのが定番です。

 

以下、それぞれについて説明します。

 

■事業的デューデリジェンス

相手方ビジネスの社会的価値を多角的に分析

事業的なデューデリジェンスにおいては、M&Aの相手方企業についてマーケティング分析を行った上で、業界市場内での客観的な立ち位置を探り、経済的価値を把握することになります。

 

マーケティング分析の手法で代表的なものとして、たとえばPEST分析などを挙げることができます。PEST分析は、ビジネスに対する規制動向(Politics)、業界の経済動向や顧客の所得水準(Economy)、人口動態や流行の変化(Society)、ビジネスに関連する技術動向(Technology)などを客観的に検証することから、その企業をマクロ視点で環境分析する手法です。

関わるのは経営助言のプロ

事業的デューデリジェンスについては、企業が経営コンサルティングファームに依頼して実施することが多くなっています。自社で行うよりも、マーケティング理論を知り尽くしている専門家を頼ったほうが、本業に集中できるだけでなく、M&Aの相手方について漏れなく確実に現状を把握できるからです。

 

■経済的なデューデリジェンス

お金周りについて総合的に洗い出す

次に、経済的デューデリジェンスについてです。M&Aの相手方企業について、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書といった財務諸表や会計帳簿をチェックすることはもちろんのこと、簿外債務・偶発債務まで合わせて企業価値を把握。

 

また、税務面についてのチェックも忘れないようにします。支払うべき税金の未納が隠れていた場合には、M&A後に追徴されて経済的な損失を被ります。さらにマスメディアによって「申告漏れ」として報道されれば、たとえ税務当局との見解の不一致が理由だとしても、社会的信頼に対するダメージが及びえます。

関わるのは財務のプロ

経済的デューデリジェンスに関わるのは、公認会計士や税理士といった財務の専門家です。やはり、M&Aを実施する企業から依頼を受けて、デューデリジェンスを実施するのです。

比較的規模が大きなM&Aでは、公認会計士の組織である監査法人や、税理士の組織である税理士法人に依頼されることが多くなっています。

 

■法的なデューデリジェンス

M&Aが中止になるほどの重大な瑕疵に注意

最後に法的デューデリジェンスを解説します。様々な法律がビジネス活動のあらゆる面に絡んできますので、多様な側面から相手方企業の法的要素をチェックしなければなりません。

たとえば、債権債務の種類や額、権利義務の相手方企業の状況、保有している資産の種類や額、発行済みの株式やその株主に関する現況調査、関連法令を誠実に遵守し、コンプライアンスが徹底されているかどうかなどをくまなく確認していきます。

 

特に気をつけなければならないのは、M&Aの交渉を即刻中止しなければならないほど深刻な法令違反が認められる場合です。これを「ディールブレイカー(deal breaker)」といいます。

 

たとえば、事業を行うために必要不可欠なはずの許認可や届出が行われていなかったり、重要な権利の存在が確認できなかったりするのが、ディールブレイカーの例です。

このディールブレイカーの存否確認を、法的デューデリジェンスでは最優先で行う必要があります。

関わるのは法律実務のプロ

法的デューデリジェンスに関わるのは弁護士や司法書士といった法律実務家です。弁護士は刑事事件を含む法律問題全般に、原則としてオールマイティで関わることができます。ただし、不動産や商業登記に関わる法律問題は司法書士のほうが精通していますし、従業員の待遇などの労働問題は社会保険労務士のほうが関与に適している場合があります。

 

このほか、特許や著作権などの知的財産権に関しては、弁理士のほうがデューデリジェンスにふさわしいケースもあると考えられます。

 

■まとめ

以上のようなデューデリジェンスを進めていった結果、M&Aの条件や内容に変更すべき事情が生じた場合には、M&A契約書を双方の合意の上で修正する必要があります。

また、ディールブレイカーなどの深刻な問題が相手方企業に認められる場合には、M&A交渉を中止しなければなりません。

ひとたびM&A契約が正式に取り交わされれば、後から不具合が発覚しても、契約を取り消したり解除したりすることは容易でありません。

それでも、「注意義務を果たした」「M&Aの当事者としての責任を果たしている」と自信を持って主張するためには、事前にしっかりとデューデリジェンスを実施しなければならないのです。

みそしる
紙媒体も含めて10年を超えるキャリアがあるフリーランスライター。法律・経済・政治のコンテンツ制作を得意とする。

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