買収や合併だけじゃない! 「M&A」全体像の基礎知識

買収や合併だけじゃない!  「M&A」全体像の基礎知識

M&Aという言葉を聞いたことがない人も少なくなってきたのではないでしょうか。ただ、「合併」「買収」という意味しかイメージできない人がほとんどなのが現実です。そこで、あなたがM&Aの全体像を知っておけば、ライバルにも差を付けることができるでしょう。この記事では、M&Aの全体像を俯瞰できる基礎知識を身につけられます。

■M&Aの本当の意味

M&Aとは、ビジネスを丸ごと売り買いしたり、ビジネスをまとめて統合したりするなど、企業間がさまざまな協力をし合う契約を結ぶことを指します。また、お互いの経営的資産を活用するメリットを得て、相乗効果を図りながら将来へ向けてビジネスを戦略的に維持、拡大する目的があります。そのようなM&Aには、合併買収のほか、企業分割・合弁・株式の相互保有・業務提携といった種類があります。

 

まずは、M&Aという名前の中に含まれている「合併」「買収」について、改めておさらいします。

合併について

M&Aの「M」は、合併(merger)を意味しています。複数の法人がひとつの法人になる契約です。この合併には、合併当事者のうち、ひとつの法人の名称を残したまま、他の法人は消滅させる「吸収合併」と、すべての法人を消滅させて、別の法人を新たに設置する「新設合併」とがあります。

合併によって、お互いの会社で重複的に機能していた資源を統合することができ、経営におけるムダを省くことができます。同じ業界での合併であれば、顧客の獲得競争が低減されるため、価格を下げることができる可能性があります。また、お互いの企業文化が融合することで、相乗効果が生まれ、さらには対外的な信用度が高まっていくことも期待されます。

買収について

M&Aの「A」は、買収(acquisition)を意味しています。ある会社が別の株式会社の発行済み株式総数の過半数を取得することによって、支配的関係に置くことを意味しています。株式会社において、株式はその会社の所有権(支配権)そのものであり、発行済み株式総数のうち過半数を占める株主の意見が採用されます。そこで、発行済み株式総数の半数を超える株式を一社が取得することによって、その会社の実質的支配者となること(子会社化)が可能なのです。M&Aによる買収のほとんどは、契約に基づき、片方の会社からもう片方の会社へ株式を譲渡する手続きによって行われます。

 

■合併と買収以外のM&A

企業分割

合併や買収の意味合いから、M&Aには「法人を統合・集約させる」イメージが強いかもしれません。しかし、逆に「法人数を増やす」M&Aもありえます。その代表的な方法が、企業分割です。

ビジネス(事業)に関して有する権利義務の全部または一部を、複数の法人に振り分けます。企業分割には、分割したビジネス(事業)を、既存の法人に割り当てる「吸収分割」と、新たに設立した法人に割り当てる「新設分割」とがあります。それぞれ、吸収合併・新設合併と対応関係にあります。

企業分割では、事業を包括的に(丸ごと)、分割後の会社へ承継させることができるので、手続きが比較的簡単に済むだけでなく、M&Aをきっかけとした優秀な人材の流出を防ぐこともできます。

特に上場会社の場合、株式の譲渡によって分割することができるため、現金の持ち出しがなくM&Aを実行できるメリットがあります。企業分割で譲渡された株式を、事業を分割した会社が保有する場合を「分社型分割」といい、その分割後会社の株主が持つ場合を「分割型分割」と呼ぶこともあります。

株式の持ち合い・合弁会社

株式の持ち合い(相互保有)とは、複数の会社がお互いに、それぞれの株式を保有し合っている状態をいいます。もし、それぞれが上場会社であり、株式が市場に流通している場合には、その株式を取得すればよく、相互保有について特別な契約を必ずしも締結する必要はないわけで、利便性も高いです。

相互保有は、それぞれの会社が友好的な関係にあれば、発行済み株式総数のうち、かなりの割合が、会社の経営方針に反発しない株主によって占められることになります。よって、安定的な経営ができ、外部からの敵対的買収の企みにも抵抗できるメリットがあると考えられてきました。しかし、国際会計基準において、株式の相互保有は必ずしもメリットが多くない運用となっていますので、今後は縮小傾向になると考えられます。

合弁会社とは、特定の事業目的のために、複数の会社が特定の会社に出資し合うことをいいます。一般的には、日本に進出したい外資系の会社が日本の会社と提携して、出資し合って、会社を新設することを指し、ジョイントベンチャーとも呼ばれます。

ただし、既存の会社に出資したり、日本の会社同士が提携したりして新会社を設立することなども、合弁関係と呼ばれます。

 

■広い意味のM&A……「業務提携」

以上は、企業による何らかの出資を伴う(資本関係に移動がある)M&Aでした。その一方、資本関係の移動がなく、複数の企業が協力関係を取り結ぶ合意を行う「業務提携」もあります。お互いの得意分野を持ち寄りつつ、苦手分野をカバーし合うことで、相互の経済的発展を図る狙いがあり、これもM&Aの一種といえます。

共同開発(技術提携)

商品やサービスの研究開発段階において、本来は企業秘密であることがほとんどの工業的な技術や生産工程についてのノウハウなどを提供することによって、業界全体の発展を図る契約です。複数の会社がお互いに技術やノウハウを提供し合えば、無償で合意のみの提携を行うことも可能です。ただ、一方の会社が他方の会社から一方的に技術やノウハウの提供を受ければ、有償による提携となることも多いでしょう。

OEM提携

生産部門における技術提携の一種です。OEMとはoriginal equipment manufacturerの略で、ある企業の有名ブランドの商品を別の企業の工場で生産することを指しています。多くの場合、小売業において世間の知名度が高い企業が生産部門を持っていない場合に、生産ラインを保有している既存企業に掛け合って、有償によってOEM提携を結ぶことが通常です。

OEMを持ちかけられた企業は、常に生産ラインを動かし続けることができるので、生産性が向上するだけでなく、収益が安定しうるメリットを享受できます。

販売提携

これは、商品やサービスを創り出した後の段階において、複数の企業が協力関係を結ぶことです。マーケティングリサーチやプロモーションに強い企業と、メーカーなどが提携することで、お互いの強みを活かして弱みをカバーし合うことが一般的です。また、メーカー同士が提携して、お互いの顧客やマーケティングファネルを活かし合うこともありえます。

 

■まとめ

M&Aとは、合併と買収だけではありません。経済がグローバルになり、顧客の需要が多様化し、ビジネスが複雑化していくにつれて、各企業は今後の生き残りや成長を賭けて、他の企業と様々な協力関係を結んでいきます。

以上で採り上げたような広い意味でのM&Aには、企業における人的・物的・経済的資源のムダが省かれて合理化され、商品やサービスの品質向上や価格低下に繋がっていくことが期待されます。ひいては、人々の幸せな生活に繋がっていくのです。

みそしる
紙媒体も含めて10年を超えるキャリアがあるフリーランスライター。法律・経済・政治のコンテンツ制作を得意とする。

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