調剤薬局業界のM&Aについて:押さえておきたいポイント

調剤薬局業界のM&Aについて:押さえておきたいポイント

順調に拡大していた調剤薬局業界ですが、診療報酬・調剤報酬の改定が続いたことにより収益は低下傾向にあります。このような背景から、徐々にM&Aを中心とした業界再編の流れが押し寄せています。今回は、そんな調剤薬局業界の概要を説明した上でM&A時のポイントをご説明します。

■調剤薬局業界の概要

これまでの主要プレイヤーは個人薬局

ドラッグストアを含めた薬局の総数は5万店舗以上とも言われており、コンビニの数より多いのが現状です。その中でも調剤薬局市場は、厚生労働省の調べによると7兆円以上あり、ここ数年で大きく成長してきた業界です。加えて、独占寡占が進んでいないという特徴があり、売上規模の小さい個人薬局が多いのが特徴です。

今後は寡占化が進み、主要プレイヤーは中小薬局へシフト

厚生労働省は増えすぎている日本国内の医療費を削減しようとしており、実際に2年に1度、調剤報酬の改定等を進めています。2018年には結果、スケールメリットを活かせない個人薬局では利益が出しづらい環境が進んでいます。このような背景から、大手・中堅企業を中心に調剤薬局業界のM&Aも増加してきています。今後はある程度M&Aによる集約化が進み、極端に小規模な薬局は淘汰されていく可能性があります。

スケールメリットだけを求めたM&Aでは中堅規模の調剤薬局も競争が厳しくなっています。例えば、お薬手帳をスマートフォンアプリにして提供したり、遠隔地の患者には郵送で処方したりと、大手調剤薬局では様々な顧客獲得に向けた取り組みが進んでいます。

 

■調剤薬局の収入源と今後の展望

調剤薬局の収入源について

調剤薬局の収入源は「調剤報酬」です。その10%〜30%は患者が負担しますが、70%〜90%は医療保険者が支払うことになっているため、回収リスクがほぼありません。「調剤報酬」は①薬剤料②調剤技術料③薬学管理料④特定保健医療材料料の4つに分けられます。この中でも、経営に大きな影響を及ぼす特に重要な項目が薬剤そのものの料金である①薬剤料と②調剤技術料の中の⑴調剤基本料です。

「調剤報酬」   =調剤薬局の収入源

「調剤報酬」内訳 薬剤料

         ②調剤技術料

          調剤基本料⑵調剤料⑶各種加算料

         ③薬学管理料

         ④特定保険医療材料料

①薬剤料は薬剤の定価である公定価格(いわゆる定価)と薬局が卸業者やメーカーから仕入れた際の仕入価格の差額である「薬価差益」を生みます。「薬」を仕入れて売る、その時の粗利に影響しますので経営的に非常に重要な項目です。

②調剤技術料の内、⑴調剤基本料はその薬局店舗の所在地によって点数が異なります。後述しますが法改正等の影響を受けやすいという特徴があります。

収入源である薬剤料と調剤基本料の今後の展望

薬剤料について

2年に1度の診療報酬・調剤報酬の改定の影響を直に受けるのが薬剤料です。高齢化の進展により増加する薬剤料を下げるべく、厚生労働省としてはジェネリック医薬品の推進等を進めてきました。2021年から薬価改定を進める方針も示しており、今後も調剤薬局の薬価差益は減少していくことが見込まれます。

調剤基本料について

調剤基本料は下記の通り大きく4つに分かれています。門前薬局というのが、病院のすぐ側などの好立地に位置する薬局です。院内薬局は病院の中にある薬局です。調剤基本料1に分類されるのは「かかりつけ薬局」と呼ばれるものです。

(調剤基本料)  (イメージ)                                   

調剤基本料1  住宅地や商店街の小さな薬局

調剤基本料2     門前薬局

調剤基本料3        門前薬局

特別調剤基本料  院内薬局

厚生労働省の大きな方針・方向性としては「院内薬局から門前薬局へ」(医薬分業)、「門前薬局からかかりつけ薬局へ」と段階的にシフトしています。現状の点数も調剤基本料1(上)の方から順に高くなっています。

これまで、大手・中堅の調剤薬局チェーンは門前薬局で収益を確保できていましたが、今後も厚生労働省の「門前薬局よりかかりつけ薬局」を優遇する措置の継続により、減益基調が続くと予想されています。

 

■調剤薬局のM&Aそのポイント

売買対象となる店舗は拡大している

門前薬局を展開する調剤薬局チェーンが規模の拡大だけを目指せば、同じ門前薬局の買収を検討するかもしれません。しかし、「門前薬局からかかりつけ薬局」を推進する厚生労働省の方針を勘案すれば、門前薬局ではなく、いわゆる街の小さな薬局・かかりつけ薬局を買収した方が、リスク分散の意味から良いかもしれません。

つまり、大小問わず様々な立地の、様々なタイプの薬局が買収の候補となります。

医療機関との関係性、薬剤師の確保、仕入先との関係性

医療機関との関係性

処方元医療機関のドクターとの関係性は重要なポイントです。特に門前薬局の場合は事業の生命線となります。経営者が変更になることで関係が上手くいかなくなるリスクがあります。M&Aの交渉プロセスの中で、きちんと確認しておくことが重要です。

薬剤師の確保 

薬学部の期間延長などから慢性的な人材不足状態が続いています。薬剤師1人1日あたりの処方箋枚数に規制があるため、規模の拡大あるいは安定経営を維持するためには、まず薬剤師の確保が必要不可欠です。特にM&A後の薬剤師の離職は大きな問題です。M&A後の業務の統合作業をPMI(Post Merger Integration)と呼びます。PMIまできちんと行える専門家に早い段階で相談するようにしましょう。

仕入先との関係性

薬剤の仕入れ先である、医薬品メーカーや卸業者との関係性は重要です。M&Aによりスケールメリットを享受できる可能性があります。つまり、値引き交渉が可能になるということです。ジェネリック医薬品に関して、これまで報酬加算する等して厚生労働省は推進を図ってきました。今後もこの方針は変わらないことが予想されます。長期的な関係性を維持した上で常備していく必要があります。

 

■まとめ

調剤薬局の収入源と今後の展望に整理した通り、調剤薬局は収益構造が一般的な事業会社と異なります。特に2年に1回行われる診療報酬・調剤報酬改定から受ける影響は、同じ調剤薬局でもその出店状況から異なります。調剤薬局業界を熟知した会社であれば、厚生労働省の今後の方針から、対象先がどのような影響を今後受けるか等、トータルで相談することができます。M&Aを検討する際は業界に詳しい専門の会社に相談すると良いでしょう。

uen0
政府系金融機関にて約5年法人融資業務に従事。年商1,000万円から200億円まで様々な規模、業種を担当。融資だけでなく、外為、M&A等にも携わる。現在は自身の起業を準備をする傍、個人事業主や起業家向けコンサルティング業務を行っている。

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